8月3日UCSFセミナーの講演要旨

生殖細胞は,卵や精子に分化する細胞種であり,生物種の維持,遺伝,進化の観 点から極めて重要である。多くの動物において,生殖細胞は胚発生初期に確立され,体細胞とは異なった発生運命をたどる。生殖細胞の形成過程では,しばしば mRNA転写の活性が一過的に抑制されることが知られている。このような転写抑制は,体細胞分化に関わる遺伝子発現の抑制を通して,生殖系列分化を保証す るメカニズムであると予想されている。例えば,ショウジョウバエや線虫胚における生殖系列の確立過程では,RNA polymerase II(RNAPII)依存的転写がグローバルに抑制される。このグローバルな転写抑制は, RNAPIIのC-terminal Domain (CTD)のリン酸化を阻害することにより引き起こされる。CTDは,7アミノ酸のリピート配列から構成され,RNAPII転写とRNAプロセッシングと を連携させるプラットフォームとして機能する。

polar granule component (pgc) RNAは,ショウジョウバエ生殖質に局在する因子として単離された。そして,anti-sense knockdown法を用いた結果から,pgcは生殖細胞前駆細胞(極細胞)の形成には必要ないが,生殖巣へと移動する時期における極細胞の生存に必須であることを報告してきた。私たちは,pgc遺伝子のnull突然変異体を単離し,pgcがCTD Ser2のリン酸化阻害に必須であることを見いだした。さらに,当初非コード RNAと予想されていたpgc RNAが,実は71アミノ酸残基からなる小タンパク質をコードしていることを明らかにした。本セミナーでは,Pgcタンパク質による極細胞での転写抑制の 分子機構について紹介すると共に,生殖細胞における転写抑制の意義とその分子機構の遺伝子発現制御における普遍性についても考察したい。また,せっかくの機会ですので,私が所属しております理研CDBの紹介も簡単させて頂きたいと思います。本年秋頃からPIポジションの新規公募が再開される予定です。

参考文献
Hanyu-Nakamura, K., Sonobe-Nojima, H., Tanigawa, A., Lasko, P. and Nakamura, A. (2008). Drosophila Pgc protein inhibits P-TEFb recruitment to chromatin in primordial germ cells. Nature 451, 730-733.

Nakamura, A. and Seydoux, G. (2008). Less is more: specification of the germline by transcriptional repression. Development 135, 3817-3827 (review article).
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